セクハラ問題解決スペース

1.セクハラ問題とは

男女雇用機会均等法第11条では、セクシャルハラスメント(セクハラ)に対する企業の配慮義務について規定しています。

平成19年4月1日に法改正が行われ、女性だけでなく男性への差別も禁止されました。

均等法によれば、セクハラとは『職場における性的な言動に対するその雇用する社員の対応により、その社員がその労働条件につき不利益を受け、あるいは、その性的な言動により社員の就業環境が害されること』と定義しています。労働条件につき不利益を受けるセクハラを対価型、就業環境が害されるセクハラを環境型といいます。

職場でセクハラが発生し、被害者が法的な責任を追及する場合は、直接セクハラを行った加害者と企業に不法行為による損害賠償を求めることになります。職場でのセクハラでは、加害社員が責任を問われることは当然ですが、企業としての使用者責任も問われることになります。また社員の安全と健康を守るのは、労働契約上の義務(安全配慮義務)ですから債務不履行による損害賠償責任が生じる可能性もあります。

2.セクハラ問題対処法

社員(労働者)の方へ

現在の日本の職場環境においては、セクハラは男性上司から部下である女性社員に対して行われることが多いので、ここでは女性社員の方へ向けてのメッセージとします。

男性上司が、職場での優位な地位を利用して、女性社員の意に反する性的言動を行ったとしてもその言動のすべてがセクハラとして違法となるわけではありません。違法性の判断に当たっては、男性上司の行為の内容、職場での地位、女性社員の年齢、女性社員の結婚歴、性的言動が行われた場所、言動の反復・継続の程度、女性社員の対応等が総合的に検証されます。検証の結果、男性上司の行為が社会常識から見て大いに問題がある程度のものであると判断されれば、女性社員への人格権の侵害となり、男性上司のみならず男性上司の使用者である企業にも損害賠償責任が生じる可能性があります。

セクハラ行為は、密室で行われることが多いですから、社員としては上司が行った言動の内容、日時を逐一記録しておく必要があります。セクハラであると感じたら、すぐに企業側へ相談するべきです。体調を崩すまで我慢するなどということはしてはいけません。我慢していたことが原因でうつ病になる社員の方も居られますが、自分が損をするだけです。

卑劣な行為に対しては、毅然とした態度で臨むことが必要です。

経営者・企業担当者の方へ

職場において起こるセクハラ問題については、近年、企業の損害賠償リスクがたいへん大きなものになっています。セクハラの発生による企業イメージの低下も軽視できないものです。少子高齢化が急速に進む中で、優秀な人材の確保はますます難しくなっていくと予想されます。『セクハラを行う社員など、うちの会社にはいない』と言い切れればいいのですが、そう言い切れないのが現実だと思います。セクハラを行う社員は、自分がセクハラを行っているとは思っていないことが多く、それどころか自分は女性にもてるので問題ないと勝手に思い込んでいる男性社員も多々見受けられます。セクハラを行った社員が責任を追及されるのは当然のこととしても、その社員の使用者として企業が責任を追及されるのは避けなければなりません。

仮に使用者責任を追及されても、賠償責任のないことを立証できる体制を整備しておく必要があります。具体的には以下のような内容になります。

  1. 企業としてのセクハラ対策の明確化およびその周知、啓発
    • 就業規則への記載をきちんとする
    • 研修を実施する
  2. 社員の相談、苦情に応じる
    • セクハラ相談窓口の明確化
  3. セクハラへの迅速かつ適切な対応
    • 未然防止策の策定を行う
    • 事実関係の迅速かつ正確な把握を行う
    • セクハラ加害者の企業内処分(懲戒)を適切に実施する
    • セクハラ被害者の配置転換等の配慮義務を適切に履行する